腹部のX線検査を受けた後、妊娠している事が分かったのですが、心配ありませんか?
腹部のX線検査を受けた後、妊娠している事が分かったのですが、心配ありませんか?
診療放射線技師会では、患者さんが確実に妊娠している可能性がある場合は、なるべくX線検査を行わずに他の検査を行います。
しかし、妊娠初期には、本人も自覚していないことが多く、X線検査を受けて微量ですが、被ばくをすることもあります。
また、妊娠中でも病気の治療に検査が必要な場合は、X線防護を行ってX線検査を行います。
放射線被ばくによる胎児への影響はに、表に示すものがあり、時期により影響は異なります。
これらの影響は、確定的影響と呼ばれ、しきい線量が存在し、おなかの中の胎児が、このしきい線量以上の被ばくをしたときにしか起きません。
腹部X線撮影による胎児の被ばく線量は、表に示す通り、1.4mGy(注1)程度ですから、このしきい線量(100~200mGy)よりはるかに少ない線量なので、これらの影響を心配することはありません。
確定的影響には、その他に白内障、脱毛や不妊などもありますが、通常のX線検査の線量では、これらの障害は起こりません。
注1)mGy(ミリグレイ)放射線が物質に与えたエネルギーを表す吸収線量の単位 1Gyの1000分の1。
●胎児への影響としきい線量(ICRP Pub 60)
時期 | 影響 | しきい線量(mGy) |
受精~15日 | 流産 | 100 |
受精後2~8週 | 奇形 | 100 |
受精後8~15週 | 精神発達遅延 | 100~200 |
●妊娠中における主なX線検査による胎児の被ばく線量(ICRP Pub 84)
検査の種類 | 平均的な線量(mGy) |
胸部X線撮影 | <0.01 |
腹部X線撮影 | 1.4 |
頭部X線撮影 | <0.01 |
腰椎X線撮影 | 1.7 |
骨盤X線撮影 | 1.1 |
胃透視検査 | 1.1 |
注腸検査 | 6.8 |
頭部CT検査 | <0.005 |
胸部CT検査 | 0.06 |
腹部CT検査 | 8.0 |
骨盤CT検査 | 25.0 |